多くのプロジェクトが「外見」から考えがちである。特にありがちなのは、建物や空間、環境を伴うプロジェクト。長年、様々なプロジエクトに関わってきて、お話を頂いた時には、すでに建築のパース「絵」(完成予想図)だけができていて、中身をどうしたらいいか?というご相談の多いこと!最近は、CG(コンピュータグラフィックス)の技術の進歩が目覚ましく、その完成度は高く、すでに出来上がっているかのように見える。確かに、多くのステークホルダーを有するプロジェクトでは、目指す方向性を共有するのに「絵」ほど物を言うものはない。人の認知の80%は視覚から、である。それだけに「絵に描いた餅」の功罪は大きい。
故に、まず、誰もが見てわかる「外見」から入って、追っかけ「中身」をなんとか、すり合わせていくようなスキームに陥りがちだ。そもそも、本来は、コンセプトから「中身」の商品やサービスなど事業構造を構築して、それにあった「外見」の建築を考えるべきところ、まず先に、とりあえず、漠然とした状態で、先に設計を依頼してしまうケース。しかし、設計とは、あくまで、要望に対する請負業務である。が、多くの人はそれを誤解していると思う。漠然とした要望に対して、的確に解決された設計プランが出てくると思いがちである。設計者はあくまで、要望を形にするのが職務であって、事業構造の具現化まで期待するのは、お門違いである。
我々はまず、プロジェクトの計画を進める順序=フローの提案から入る。まずは、マーケテイングから取り組み、生活者視点での分析、把握に重点を置きたい。最近はGPSによってリアルな人々の動向も把握できる。ここで、建築計画から入ると、よく「あるある」なのは、歴史からリソースを持ってくるという傾向。過去の経緯よりは、生きてる情報を優先して、未来の予測をしたい。そこから、将来にわたって生かされるであろう、DNAとして受け継がれる価値をコンセプトとして設定したい。そして、「中身」である商品やサービス、提供価値を構築していく。その価値を最大限に表現するツールとして、「中身」に近いところから「外見」を考えていく。商品であれば、パッケージ。見ただけで買いたくなる「無言の販売員」としての役割を担うことが期待される。その延長線上で、ようやく、大きなパッケージとしての空間、建築、環境を考える。
ここで、設計は、コンセプトから紐解くのはもちろん、もう一つの大切な機能として、実際に使う人の身体に近しい感覚を大切にしたい。つまり、リアルな人の目線の捉えやすさ、歩きやすさ、手に触れやすさ、座りやすさ、といった動きを促す動線機能、さらには、目につく発見、歩きたくなる雰囲気、触った時の感触、座った時の居心地、という使う人の感覚に紐づいたディテールが求められる。最終的には、人が五感で感じる感動が価値を決めると思う。これを「ディテールに神が宿る」と言っている。
そして、全体像が見えてきたら、今、最も大切なのは、コミュニケーションデザインだと思う。今や、ネット、ウェブ、SNSで得られる情報が全ての入り口と言っても過言ではない。誰もが検索して、情報を得て、判断して、行動を起こすかどうか、、、それは、情報発信次第、コミュニケーションデザイン如何で、せっかくの中身も外見も伝わらないと意味がない。今は、逆説的に、最終的な見え方であるコミュニケーションデザインから発想するフローへと進化しつつある。